莫言は自分の小説への影響作家として、ロマン・ロランとガルシア・マルケスをあげている。フランス文学とラテンアメリカ文学から学んだということだ。日本が近代文学をヨーロッパから学んだように、先行する文学を学ぶことから自らの文学修行を始めていることから、中国が世界の一員であることを私は再認識した。中国が世界文学へ登場してまだ日が浅いと考えるべきなのだろうか。中国にも村上春樹の読者は多いと聞く。「白い犬とブランコ」の犬は、川端康成の小説に登場した犬にインスパイヤーされたと語っている。旧ソ連が東西冷戦時代を作っていた頃も、ドストエフスキーやトルストイやチェーホフは日本で愛読されていた。高校時代熱心なドストエフスキー読者だった私は今でも現在のプーチンロシアに対して親和的である。文学は日本の旺盛な翻訳文化のおかげで国境を越えているかも知れない。時の政権の政策によって現在の日中関係は、反日と嫌中の風潮があるが、文学はお互いの人間的な理解を助けるツールになれるのではないだろうか?私は日中の文化的理解の、一番身近な手段として、莫言の小説を読むことをお勧めしたい。